海外FXのゼロカットシステムは、口座残高がマイナスになった場合でも、自動的に0に戻り、追加の証拠金(追証)を求められることがない制度です。しかし、「本当に追証なしで安心なのか?」「ゼロカットシステムには思わぬ罠があるのではないか?」と心配する方も少なくありません。
本記事では、ゼロカットシステムの基礎知識に加え、メリットやデメリット、隠されたリスク、不正利用した際の影響についても詳しく解説します。
海外FXのゼロカットシステムとは?
海外FXのゼロカットシステムとは、ロスカットが間に合わず口座残高を超える損失が発生した場合、FX業者がその損失を補填し、口座残高をゼロに戻す制度です。これにより、追証(追加証拠金)の発生がなく、トレーダーが借金を負うリスクがないため、投資家保護の一環として機能します。。
ここでは、ゼロカットシステムを初めて知る方のために、その概要を詳しく解説します。
ゼロカットとロスカットは異なる制度
ゼロカットは、口座のマイナス残高を0に戻す制度ですが、ロスカットは証拠金維持率が各FX業者の設定値を下回った際に保有ポジションを強制的に決済する制度です。
ロスカットは、トレーダーの資金保護を目的として、海外FX・国内FXの両方で採用されています。
つまり、口座残高が全て失われる前に行われるのがロスカットで、口座残高が0を下回った後に行われるのがゼロカットということですね。
ゼロカットシステムで追証なし
ゼロカットシステムが発動すると、たとえ口座に大きなマイナス残高があっても全額が帳消しになり、口座残高は0にリセットされます。
そのため、海外FXでは口座残高がマイナスになっても、国内FXのような追証の支払い義務は発生しません。
追証とは?
「追証(おいしょう)」とは「追加証拠金」の略で、口座残高が不足している、またはマイナスになった場合に、追加の資金を入金する必要がある制度です。
国内のFX業者はゼロカットを採用しておらず、口座のマイナス残高がリセットされることはありません。このマイナス残高は実質的に証券会社への借金とみなされ、その負債を補填するために追加の入金が求められます。
一方で、海外のFX業者の多くはゼロカットシステムを採用しているため、「追証なし」が一般的です。
国内FXで追証を払えないとどうなるのか
追証を払えない場合、最終的には「何が何でも払うか、自己破産するか」という結論に至ります。
国内FXでの追証は、端的に言えばFX業者への借金となるため、追証の金額に関わらず、国内FX業者は裁判所の督促や差し押さえを駆使して取り立てることが可能です。
FXでの借金はギャンブルとして「浪費」に当たるため、自己破産できない可能性もあります。資金管理は慎重に行いましょう。
ゼロカットシステムのメリットとデメリット
一見、追証の義務が免除されるゼロカットシステムはメリットばかりのように見えますが、追証がないことで生じるデメリットもあります。
トレーダーにとってはメリットが多いように感じますが、デメリットも理解した上で取引に臨むことが重要です。
ゼロカットのメリット
- 追証なしなので、借金の心配がいらない
- 高いレバレッジを使った大胆な取引が可能
追証が発生しないので、借金の心配がいらない
ゼロカットの最大のメリットは、追証が発生しないため、入金額を超える損失が発生せず、借金を抱えるリスクがないという点です。
たとえロスカットが間に合わずマイナス残高になっても、トレーダーの実際の損失は入金した金額までにとどまります。
ハイレバを利用した大胆な取引が可能
最大損失額が予め把握できるため、精神的に安定して大胆な取引ができるという点も大きなメリットです。
海外FXでは数千倍のレバレッジを利用したハイリスク・ハイリターンな取引に挑戦できるのも、ゼロカットによって損失が限定されているからこそです。
ゼロカットのデメリット
- 資金管理が雑になりやすい
- マイナス残高はFX業者が負担する
資金管理が雑になりやすい
ゼロカットシステムにより損失が入金額までに限定されることで、安心感から資金管理が甘くなる可能性があります。
一度ギャンブル的な取引やずさんなロット管理が習慣化すると、慎重で計画的なトレードが難しくなることもあります。
マイナス残高はFX業者が負担している
ゼロカットは、トレーダーの損失をFX業者が負担する制度なので、場合によってはFX業者の経営に大きなダメージを与える可能性もあります。
もしもFX業者が破綻するような事態になれば、追証なしのメリットどころではなくなり、保有ポジションは全て強制決済され、入金や出金もできなくなるリスクがあります。
ゼロカットシステムを頼りにせず、できるだけゼロカットが発動しないように、しっかりと資金管理を心がけましょう。
資金管理におすすめのツール
ゼロカットシステムの罠や注意点
ゼロカットシステムは、業者ごとにルールや仕様が違うので、知らず知らずのうちに、思わぬ罠に引っかかることがあります。
場合によっては、資金を失ったり、ゼロカットの悪用とみなされることがあるので、以下の3点に気を付けて、取引に臨みましょう。
マイナス残高がある状態で追加入金すると入金額が減る可能性あり
マイナス残高がある時(ゼロカット未反映時)に追加入金をした場合の対応は業者によって異なり、口座のマイナス分が追加の入金額から引かれてしまう業者もあります。
例えば、業者Aでは追加入金と同時にゼロカットが発動し、入金額がそのまま口座に反映される一方、業者Bでは、入金額からマイナス残高を差し引いた金額が反映されます。
追加 入金額 | 入金後の 口座残高 | 損失額 | |
---|---|---|---|
業者A | 10万円 | 10万円 | 0 |
業者B | 10万円 | 8万円 | -2万円 |
入金時にゼロカットが執行されない場合、入金額が減ってしまいます。システム上の罠にかからないよう、マイナス残高があるときは、業者に確認してから入金しましょう。
複数口座がある場合のゼロカット
例えば、1つの業者で複数口座を運用しているとして、口座Aでマイナス残高が発生し、口座Bに残高がある場合はどうでしょう?この場合の挙動も業者によります。
多くの業者では、口座はそれぞれ独立しているため、1つの口座でマイナス残高が出ても他の口座に影響しません。
ただし、一部業者では、口座Aのマイナス分が口座Bの残高から相殺されるようになっています。
予め、利用する業者のゼロカット規則を確認し、以下の点を把握しておきましょう。
- どのタイミングでゼロカットが執行されるか
- マイナス残高がある時に入金しても大丈夫か
- 他の口座への影響はないか
ゼロカットを悪用したトレードは罰則の対象となる
ゼロカットを利用した、高確率で大きな利益が出せる手法に、「口座を跨いだ両建て」と「窓埋めトレード」があります。
意図せずともこれらの手法を行ってしまうと、ゼロカットを悪用していると見做され、場合によっては口座凍結や利益没収等の厳しい措置が取られることもあります。
業者によって、禁止されている取引手法やゼロカットの悪用だと見做される基準は異なるので、十分に注意しましょう。
口座を跨いだ両建てについて
口座を跨いだ両建てとは、口座Aで買いポジションを持ち、口座Bで売りポジションを持つことです。
「同一業者内の複数口座での両建て」及び「複数業者間での両建て」がこの手法に当たります。
口座Aの買いポジションがどれだけ大きな損失を出しても、ゼロカットがあるお陰で損失は入金額のみに抑えられますが、一方口座Bでは大きな利益が出ているわけなので、総合すると、損失を大きく超えた利益が獲得できるということです。
誰もが皆この手法を利用してしまうと、業者の負担ばかりが大きくなってしまうため、ゼロカット不正利用として禁止されています。
窓埋めトレードについて
FX市場が休みの土日に、ボラティリティに影響を与える出来事が起こると、金曜日の終値と月曜日の始値のチャートに大きな「窓」が開くことがあります。
窓が開いた後の相場は、この窓を埋める方向に動きがちです。窓埋めトレードとは、この現象を利用した勝率の高い手法です。
すべての業者でこの手法が禁止されているわけではありませんが、週明けの窓ばかりを狙って取引する行為を、ゼロカットの悪用だと判断されるケースもあるのでご注意ください。
なぜ海外FXはゼロカットを採用し、国内FXは採用できないのか?
なぜ海外FXがゼロカットシステムを採用しているのか、逆に国内FXはなぜゼロカットを採用できないのか解説します。
海外FXがゼロカットを採用している理由は3つ
海外FXがゼロカットシステムを採用している主な理由は3種類あり、以下の通りです。
- 国によってはゼロカットが義務だから
- 国外からの追証回収が困難だから
- 日本のトレーダー獲得に繋がるから
1.国によってはゼロカットが義務だから
追証ありが当たり前になっている日本国内FXとは逆に、世界では追証なしの方がスタンダードです。
例えば、欧州証券市場監督局(ESMA)では、EUの投資家保護のため、ゼロカットをブローカーに義務付けています。
2.国外からの追証回収が困難だから
国内FXの顧客とは異なり、海外FXの顧客は世界各国に点在しています。
それらの顧客に追証を請求して、万一支払い拒否をされた場合、海外FXは各国の法律に則った対応をしたり、裁判を行うことになります。
実際問題として、これでは余計な時間もお金も労力もかかってしまうため、いっそ全てゼロカットにしてしまおう、と割り切った判断をしていると言えます。
3.日本のトレーダー獲得に繋がるから
日本の多くのトレーダーは、国内FXの「低レバレッジ+追証あり」というシステムに慣れています。
そこに、「ハイレバレッジ+追証なし」という魅力的な条件を提示すれば、たくさんの新規顧客獲得が見込めます。
日本の金融ライセンスを取得していないという不安要素も、ゼロカットなどの魅力的な要素で霞ませることができます。
国内FXがゼロカットを採用できない理由は2つ
国内FXがゼロカットシステムを採用しない主な理由は2種類あり、以下の通りです。
- 金融商品取引法で禁止されているから
- 最大レバレッジが低いから
1.金融商品取引法で禁止されているから
日本国内では、そもそも「金融商品取引法」でゼロカット(損失補填)が禁止されています。
そのため、日本の金融庁で金融ライセンスを取得しているFX業者は、顧客に対してゼロカットを行うことができません。
参考:損失補塡等の禁止【e-Gov法令検索】
2.最大レバレッジが25倍で低いから
国内FXの最大レバレッジは、25倍に制限されています。
低レバレッジでの取引では、大きく値が飛んでも、基本的にマイナス残高になる(ロスカットが間に合わない)という事態は発生しにくいです。
ハイレバ取引ができるハイリスクハイリターンの海外FXとは異なり、国内FXではそもそもゼロカットの必要性があまりない取引システムが整備されています。
参考:投資者保護のための主なルール【金融庁】
国内では、投資家保護のための日本金融庁による規制の一つとして、「ゼロカットなし・追証あり」の代わりに最大レバレッジが低くなっています。
ゼロカットはいつ、どのように発動するの?
本来は、一定の証拠金維持率を下回ると強制ロスカットになりますが、万が一、相場の大変動が起こってロスカットが間に合わなかった場合、ゼロカットが発動します。
それでは、海外FXのゼロカットがいつ発動されるのか見ていきましょう。
海外FX各社のゼロカット発動タイミング
マイナス残高で決済をしたのち、ゼロカットが反映され口座残高がリセットされるタイミングは、海外FX業者によって異なります。
一定時間が経てば自動的にゼロカットされる業者もあれば、連絡や追加入金が必要な業者もあるので、参考までに、代表的なFX業者のゼロカット反映時間をご紹介します。
海外FX 業者名 | ゼロカット反映までの時間 |
---|---|
AXIORY | 1営業日以内に自動リセット |
easy Markets | 1営業日前後で自動リセット |
HFM | 1~数時間 入金で即リセット |
iFOREX | 即リセット |
IS6FX | 24時間以内に自動リセット |
LandFX | サポートに連絡でリセット |
Milton Markets | 1営業日以内に自動リセット サポートに連絡で即リセット |
MYFX Markets | サポートに連絡し、 提示額を入金でリセット |
TitanFX | 翌日(日本時間午前7時ごろ) |
Tradeview | 追加入金で即リセット |
XMTrading | 数分~数日後に自動リセット 追加入金、資金移動で即リセット |
マイナス残高があるうちに入金すると、マイナス残高と入金額で相殺されてしまう場合もあるので、事前に確認してから入金してください。
ゼロカットが発動し追証なしになるまでの流れ
ゼロカット発動までの大まかな流れは、以下の通りです。
- ロスカットが間に合わない、作用しない事態が発生
- 有効証拠金が無くなり、マイナス残高となった場合にゼロカット発動
- ゼロカット後、口座残高は0となり追証は発生しない
急な価格変動などで、本来作動するはずのロスカットが間に合わず、有効証拠金が無くなり残高がマイナスの状態になります。
有効証拠金が消費される順序
有効証拠金とは「残高・ボーナスクレジット・含み益/含み損」の合計金額です。
ボーナスの種類やクッション機能の有無によって異なりますが、まず残高から消費され、その後ボーナスが消費されます。
口座残高とボーナスが0になっても、同一口座内で含み益のあるポジションがあれば、ゼロカットは発動されません。
保有していたポジションは、マイナス残高になった後に決済されるので、決済後の口座にはマイナス残高が表示されます。
ゼロカットが執行されると、口座内のマイナス残高は全てリセットされ0に戻るので、トレーダーが追証を入金する必要はありません。
このように、ゼロカットシステムがある海外FXでは、どれほど大きなマイナスになったとしても、借金を負うことはありません。
過去のゼロカット・追証に関する各業者の対応
「どんなに大きなマイナス残高でも、本当にゼロカットされるの?追証なしなの?」という疑問を抱いている方も少なくないのではないでしょうか。
結論から言うと多くの海外FX業者はゼロカットでマイナス残高を0にし、顧客に追証の支払いを求めません。
ここでは、2015年1月15日に起こったスイスフランショックという歴史的な為替相場の急変動時に各社がどう対応したかを例に挙げてご紹介します。
スイスフランショックの概要
スイスフランショックとは、スイス国立銀行が政策変更を行ったことによって引き起こされた、外国為替相場における歴史的な事件です。
この出来事によって、スイスフランはわずか20分ほどの間に、本来の1.20CHFから0.85CHF(対ユーロ)まで暴騰しました。
あまりに急激な相場変動だったため、各業者のロスカット及び逆指値は正常に機能しませんでした。
なお、ゼロカットのない国内FXでは、多額の追証を求められた結果、借金を負ったり破産したトレーダーもいます。
XMのゼロカットに関する声明文
XMは、スイスフランショックの際に、ゼロカットが正常に発動し、顧客は追証なしとなることを発表しました。
XM声明文詳細
スイス国立銀行がEUR/CHFの上限撤廃を決定したことによって引き起こされた最近の市場での非常に大きな値動きによって、XMはスイス国立銀行による大混乱の影響は受けていないことをお客様に保証致します。
XMTradingは常にマイナス残高の自動的な保護を提供していることをお客様に再度ご案内申し上げます。
XMTradingは、この度のEURCHF通貨ペアの異例な値動き等の混乱時には、特にお客様に対する当社の忠誠心の現れとして、こちらのマイナス残高の自動的な保護を継続していく所存です。
先週中にマイナス口座残高が発生した全てのお客様は、当社の評判と強みへのお約束を果たす為に、マイナス残高が起こりうる他のケース同様に、マイナス残高は既にリセットされています。
(「重要なお知らせ – CHFに関する更新」より抜粋)
海外FXで信頼性ナンバーワンの所以といったところでしょうか。
easyMarketsのゼロカットに関する声明文
easyMarketsも同様にスイスフランショックに際して、ゼロカットが発動し、顧客が追証の支払い義務を受けなかったことを発表しました。
easyMarkets声明文詳細
スイス国立銀行(SNB)の木曜日の発表によって3年に及んだスイスフラン(CHF)への制限が終了し、この通貨の価格が急上昇して多くのブローカーとそのクライアントたちが大きな損失を被りました。
easyMarketsには強力なリスク管理システムがあったために影響を受けず、クライアントの皆様の安全もストップロス保証と負の残高保護によって確保されました。easy-forexでは安心して通常どおりに取引をしていただける事をクライアントの皆様に保証し、資金の保護や監督機関の規制を完全に遵守する事を含む数多くの対策を通じてクライアントの皆様の安全を確保する事にコミットし続けます。
ストップロス保証と、負の残高保護、リクオートが無い事、そして専門家チームによる完全なサポートによって、クライアントの皆様には安心して思う存分取引していただけます。事実、easyMarketsはCHFが含まれたペアでの取引を最も早く再開したブローカーの1つで、この通貨でのポジティブな取引活動を観察しています。
easy-forexの約束
(「クライアントのスイスフランショックについて」より抜粋)
- リスクを最小化するためのストップロス保証
- 取引を最大化するための利益確定保証
- CHFのクロス取引に対するリクオートまたは改正なし
- 負の残高保護
まっとうな業者は不測の事態でも、ゼロカットを執行していますね。
ゼロカット規約を反故にし顧客へ追証の支払いを求めた海外FX業者もいる
一方で、本来の責任を逃れてユーザーに不利益を被らせる悪徳業者が存在することも事実です。
スイスフランショック時に多くの海外FX業者がゼロカットを行った中、一部の業者はゼロカットを突然廃止し、一気に顧客の信頼を失う形になりました。
元々ゼロカットを採用していたにも関わらず、「今回は想定の範囲外だからゼロカットは不可能」と顧客に追証を求めたという事例がありました。
海外FXでトレードする際は、FX業者の過去のトラブルにも気を付けて、吟味したほうが良さそうですね。
海外FXの追証なし・ゼロカットに関するよくある質問
お得な口座開設&入金ボーナス