FXの取引方式、STP(Straight Through Processing)方式は、取引の透明性と効率性を高める重要な執行方法です。このSTP方式には二つの主要な注文タイプがあり、それぞれの特徴や使い分けを理解することが重要です。
本記事では、FX取引におけるSTP方式について、基本的な仕組みから実践的な注意点まで解説します。インスタント注文とマーケット注文の違いや適切な使い分け方も説明していきます。
FX取引のSTP方式とは?特徴と仕組み
STP方式は、FX取引の透明性と効率性を兼ね備えた執行方式です。この方式では、トレーダーの注文が直接市場に繋がれるため、より公正で迅速な取引が可能です。
また、STP方式では、Instant Execution(インスタント注文)とMarket Execution(マーケット注文)、二つの注文タイプが利用可能です。
STP方式の基本的な仕組みや特徴、メリット・デメリットを解説していきます。
STP方式の基本的な仕組み
STP方式は、トレーダーの注文を直接、流動性提供者(LP)に繋ぐ自動化されたシステムです。
FX業者が顧客の注文を受け取り、複数のリクイディティプロバイダー(LP)に転送します。LPが提示する価格の中から最良の価格が選ばれ、その価格で取引が成立します。
この仕組みにより、トレーダーは常に市場で最も有利な価格で取引を行うことができます。
STP方式の主な特徴は以下の通りです。
- 注文の自動処理による迅速な執行
- 複数のリクイディティプロバイダー(LP)からの価格競争
- FX業者の介入が最小限
- 市場価格に基づいた透明性の高い取引
また、STP方式では主に二つの注文タイプがあります。
1.Instant Execution(インスタント注文):
注文時に表示された価格で即時に取引を行う方式
2.Market Execution(マーケット注文):
注文を出した時の市場の最良価格で取引を行う方式
これらの注文タイプについては、インスタント注文とマーケット注文の違いと比較でご紹介します。
STP方式のメリット・デメリット
STP方式の最大のメリットは、取引の透明性と公平性の向上ですが、デメリットもあります。
- 透明性の高い価格形成:
複数のリクイディティプロバイダー(LP)から価格が提供されるため、価格の透明性が高い - 迅速な注文執行:
自動化されたシステムにより、注文が市場にすばやく反映され、取引スピードが向上 - 利益相反のリスクが低い:
FX業者は取引の仲介役として機能するため、FX業者とトレーダーの間に利益相反のリスクが少ない
- スプレッドの変動:
市場状況によってスプレッドが広がることがあり、取引コストが予測しづらい
STP方式とその他の方式の違い
FXにおける取引方式は主にSTP方式、ECN方式、マーケットメイク方式があります。これらの最大の違いは、価格形成プロセスにあります。
- STP方式:
顧客の注文を市場に流し、複数のLPから価格が提供される - ECN方式:
顧客の注文を市場参加者同士で直接マッチングし、複数のLPからリアルタイムで価格が提供される - マーケットメイク方式:
FX業者が顧客の取引相手となり、価格を提示する
STP方式・ECN方式・マーケットメイク方式、それぞれ以下のような特徴があります。
STP方式 | ECN方式 | マーケットメイク方式 | |
---|---|---|---|
価格の透明性 | 透明性が高く、実勢価格での取引 | 透明性が非常に高く、 市場価格での取引 |
透明性が低く、 FX業者が提示する価格での取引 |
執行速度 | 一般的に速い | STP方式より速い | かなり速いがリクオートのリスクがある |
スプレッド | 変動スプレッド・比較的広い | 変動スプレッド・比較的狭い | 安定・極小~広い |
利益相反 | 取引相手にはならず、 取引に直接関与しない |
取引相手にはならず、 取引に直接関与しない |
FX業者が取引相手のため 利益相反のリスクがある |
透明性や約定力、スプレッド、何を重視するかによって選ぶべき取引方式も変わりますね。
インスタント注文とマーケット注文の違いと比較
STP方式には2種類の注文方式があります。
Instant Execution(インスタント注文) とMarket Execution(マーケット注文)は、STP方式において使用される注文方式です。これらの方式は、それぞれ異なる特徴を持ち、トレーダーの取引戦略や市場状況に応じて使い分けることが重要です。
STP方式におけるインスタント注文とマーケット注文のそれぞれの特徴、メリット・デメリット、違いについて詳しく解説していきます。
インスタント注文の特徴とメリット・デメリット
インスタント注文は、注文時に表示された価格で即時に取引を行う方式です。
FX業者がトレーダーの注文を一旦受け取り、その後リクイディティプロバイダー(LP)に確認を行い、指定価格で取引を成立させます。FX業者が価格の調整や再確認に関与するため、スリッページは発生しにくいのが特徴です。
ただし、FX業者は一度注文を内部で処理するため、FX業者にとって不利な取引となる場合には稀に約定拒否が発生することがあります。
インスタント注文のメリット・デメリットは以下の通りです。
- 価格の確実性:
表示価格での約定が期待できるため、取引価格が予測しやすい - スリッページの抑制:
急な価格変動時でも、指定価格での取引が可能になりリスクを抑えられる - 心理的安定:
表示価格での取引が期待できるため、安心して取引できる
- リクオートのリスク:
市場価格が急変した場合、注文拒否・再提示(リクオート)される可能性がある
インスタント注文は、トレーダーに価格の確実性を提供しつつ、市場の実勢価格に基づいた公正な取引を可能にします。市場の急変時には特に注意が必要ですね。
マーケット注文の特徴とメリットとデメリット
マーケット注文は、注文を出した時の市場の最良価格で取引を行う方式です。
FX業者がトレーダーの注文を受け取ると、複数のリクイディティプロバイダー(LP)から最良の価格を選び、その価格で取引を執行します。FX業者は価格の調整に関与せず、取引が迅速に行われるため、取引スピードが非常に速いのが特徴です。
ただし、スリッページが発生する可能性があり、注文が必ずしも希望通りの価格で約定されるとは限りません。
マーケット注文のメリット・デメリットは以下の通りです。
- 約定の確実性:
市場に流動性がある限り、ほぼ確実に約定する - 迅速な執行:
注文処理が速いため、タイミングを逃さず取引できる - 価格改善の可能性:
市場状況によっては、表示価格よりも有利な価格で約定することがある
- スリッページのリスク:
特に高ボラティリティ時に、予想外の価格で約定する可能性がある - 取引コストの不確実性:
約定価格が事前に確定しないため、最終的なコストが予測しづらい - 心理的プレッシャー:
価格変動の激しい時期には、トレーダーに精神的負担がかかる可能性がある
マーケット注文は、流動性が高い時間帯を選ぶことで、リスクを抑えられますね。
取引スピードと約定率の比較
取引スピードと約定率については、一般的にマーケット注文の方が速く、約定率も高いと言えます。
一方、インスタント注文は指定価格での約定を試みるため、遅延や約定率の低下が起こることがあります。
Instant Execution(インスタント注文) | Market Execution(マーケット注文) | |
---|---|---|
取引スピード | 遅い: 指定価格での約定を試みるため、遅延が生じる |
速い: 最良価格で即時約定を目指すため |
約定率 | 低い: 市場の変動や価格差により、約定率が低下する |
高い: 通常の市場環境では、約定率がほぼ100%に近い |
トレーダーがSTP方式で取引する際の注意点
STP方式の特徴を踏まえ、Instant Execution(インスタント注文)・Market Execution(マーケット注文)における注意すべきポイントについて詳しく解説します。
適切な注文タイプを選択し、それぞれの特性を理解することで、STP方式の利点を最大限に活かした取引が可能となります。
インスタント注文での注意点
インスタント注文では、特にリクオートのリスクに注意が必要です。
顧客が指定した価格で取引を成立させようとするため、市場が急変動した場合や流動性が低い場合、注文がその価格で約定しないことがあります。その際、FX業者から新しい価格(リクオート)提示され、再度注文を確認する必要があります。
そのため、価格変動が激しい時には、取引のタイミングが遅れることや、取引が成立しない可能性があります。
マーケット注文での注意点
マーケット注文では、スリッページが発生するリスクに注意が必要です。
顧客が指定した価格ではなく、注文を出した時点の市場の最良価格で約定されます。特に市場が急変している場合や流動性が低い時間帯では、希望した価格よりも不利な価格で約定されること(スリッページ)が起こりやすいです。
そのため、価格変動が激しい時には、予想外の価格で取引が成立する可能性があります。
編集部のトレーダーからアドバイス
STP口座での取引では、市場の流動性変化に特に注意が必要ですので、菊池(10年以上のFX取引経験)は以下のような戦略を取っています。
ニュース発表時
FOMCの発表後、市場が急激に動いたためリクオートが発生しましたが、提示された価格が不利だったため冷静に注文をキャンセルし、市場が落ち着いてから再注文しました。その後、米雇用統計の発表前に部分利確をしてポジションを調整し、発表後に市場が落ち着いてから再エントリーし、少しずつポジションを増やしました。
また、スプレッドが広がっている時間帯は短期取引を控え、数日間ポジションを保有して長期的なトレンドに乗ることで、取引コストを抑えることができました。
流動性の低い時間帯
なるべくロンドン市場とニューヨーク市場が重なる、流動性が高くスリッページのリスクが少ない時間帯に取引を行います。
また、経済指標発表時には予想外の損失を防ぐために事前にストップロスを設定し、米雇用統計発表後の急激な変動を避けて、価格が安定した後にエントリーするようにしています。
STP方式のおすすめ口座
ここでは、インスタント注文およびマーケット注文両方の執行タイプを提供しているExnessの口座とマーケット注文の執行タイプを提供しているXMの口座を紹介します。
これらの口座は、トレーダーの取引スタイルや市場の状況に応じて、柔軟に使い分けることでより効率的な取引をサポートします。
インスタント注文方式の口座
Exnes プロ口座
Exnessのプロ口座は、指定価格での約定が可能なため、価格の安定性を重視するトレーダーに最適です。また、スプレッドが非常に狭く、取引コストを抑えられる点も魅力です。さらに、約定のスピードと精度が高く、プロフェッショナルトレーダーや大口取引にも対応しています。
スリッページが少ない
最大レバレッジ無制限
非常に狭いスプレッド
即時約定
マーケット注文方式の口座
Exness ロースプレッド口座
Exnessのロースプレッド口座は、非常に狭いスプレッドと手数料が発生しないため、取引コストを抑えたいトレーダーに最適です。特にスプレッドの低さを重視するトレーダーにとって、魅力的な選択肢です。また、スプレッドが広がりやすい時間帯でも有利な条件で取引が可能です。ただし、急激な市場変動時にはスリッページが発生するリスクがあることを理解しておく必要があります。
リクオートが少ない
最大レバレッジ無制限
超低スプレッド
迅速な約定
XM KIWAMI極口座
XMのKIWAMI極口座は、狭いスプレッドと手数料が発生しないため、コストを抑えたいトレーダーに最適です。また、迅速な約定が可能で、短期取引、デイトレード、スイングトレードに適しています。リクオートが無いのはもちろんですが、比較的スリッページも発生しにくく、マーケット注文のデメリットをあまり感じません。
低スプレッド
リクオートが少ない
約定率99.98%
約定スピード平均0.25秒
近年はSTPとマーケットメイク方式を掛け合わせた業者独自のハイブリッド方式を採用しています、これらのおすすめ口座もSTPの特徴は感じられますが、正確にはSTPに近いハイブリッド口座だと思います。
STP方式とインスタント/マーケット注文に関するよくある質問
STPとECNは何が違うの?
STPとECNどちらの取引コストが安いの?
STP方式で取引する際の最適なロットサイズは?
インスタント注文とマーケット注文、どちらが初心者に向いている?
STP方式でスプレッドが拡大しやすい時間帯は?
MT4やMT5でインスタント注文とマーケット注文を直接選択できますか?
STP方式は全ての通貨ペアで利用可能ですか?
[新着]最新のキャンペーン
お得な口座開設ボーナス