近年、地政学リスクによりヘッジ資産への需要が高まる中、金(GOLD)の安定価値と仮想通貨の柔軟性を兼ね備えた「金連動型ステーブルコイン」が注目を集めています。
この金連動型ステーブルコインにも複雑な仕組みがあり、暗号資産を初めて取引するような初心者の方は、その種類や投資方法に迷ってしまうでしょう。
本記事では、現在市場で最も人気のある2大ゴールドステーブルコインである、「テザーゴールド(XAUT)」と「パックスゴールド(PAXG)」を徹底比較しています。

両者とも優秀なデジタルゴールド投資商品ですが、規制状況・流動性・取引所の取り扱い状況などの比較結果から、どちらが自分にとって最適かを見極めてください。
金連動型ステーブルコインとは?XAUTとPAXGの基本解説
金連動型ステーブルコインとは、ブロックチェーン技術を活用して現物の金(GOLD)をトークン化したデジタル資産です。従来のステーブルコインが法定通貨(米ドルなど)と連動するのに対し、これらは金価格と連動するよう設計されています。
- 1トークン=金1トロイオンス(約31.1035グラム)の価値を保持
- 24時間365日いつでも取引可能
- 現物金より小さな単位(0.000001トロイオンス)まで分割投資可能
- 物理的な保管コストが不要
- 国境を越えた金の所有権移転が容易
従来のFXでのゴールド取引(XAUUSD)とは異なり、金連動型ステーブルコインの現物投資であれば、間接的に金の所有権を持つことができます。
金のステーブルコインの代表的なものにテザーゴールド(XAUT)やパックスゴールド(PAXG)があります。以下でその詳細を解説します。
テザーゴールド(XAUT)の特徴
発行元: Tether Limited(香港)
ローンチ: 2020年1月
規制: エルサルバドル政府の仮想通貨規制フレームワーク準拠
XAUTは、世界最大級のステーブルコイン事業者Tether社が発行する金連動型ステーブルコインです。1XAUTは金1トロイオンスの価格と連動し、実際の金塊と1対1で裏付けられています。
- スイスの専用金庫で現物金を保管
- ロンドン貴金属市場協会(LBMA)のグッドデリバリースタンダード準拠
- 最小分割単位:0.000001トロイオンス
- 現物金インゴットとの交換可能
- Tetherブランドの高い知名度と実績
パックスゴールド(PAXG)の特徴
発行元: Paxos Trust Company(米国)
ローンチ: 2019年9月
規制: ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)認可
PAXGは、米国の信託会社Paxos社が発行する金連動型ステーブルコインです。厳格な米国規制の下で運営され、透明性の高い監査体制が特徴です。
- ロンドンBrink’s gold vaultで現物金を保管
- ERC-20トークンとしてイーサリアムブロックチェーン上で動作
- 毎月の第三者監査による透明性確保
- 400オンスの金延べ棒に裏付け
- LBMA認定グッド・デリバリー基準準拠
両社とも実際の金との連動性は99.99%以上となっており、基本的な仕組みは同等レベルで信頼性が高いといえます。
XAUT vs PAXG 詳細比較|投資家が知るべき6つの違い
XAUTとPAXG 両者とも優秀なデジタルゴールド投資商品ですが、細部まで比較すると明確な違いがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
1.規制・監査体制の比較
🏛️ テザーゴールド(XAUT)の規制・監督体制
- ⚠️ エルサルバドル政府規制フレームワーク準拠
- ⚠️ BDO Italyによる四半期監査
- ⚠️ 2025年4月に初のリザーブ証明レポート公開
- 📄 出典:Tether Limited公式、エルサルバドル金融監督庁
🏛️ パックスゴールド(PAXG)の規制・監督体制
- ✅ ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)による厳格な規制
- ✅ 世界四大会計事務所KPMG LLPによる毎月監査(2025年〜)
- ✅ 透明性レポートの定期公開(月次)
- 📄 出典:Paxos Trust Company公式、NYDFS規制文書
判定:PAXGの方が監査体制と規制面で優位
PAXGが優位と判断する理由は、世界四大会計事務所であるKPMGによる監査が業界標準として高い信頼性を持つことです。また、月次監査は四半期監査と比較して、より頻繁な検証により透明性が高く、投資家にとってリスク管理面で安心感があります。
2.流動性と取引量の比較
項目 | PAXG | XAUT | データソース |
---|---|---|---|
時価総額 | 約898億円 | 約820億円 | CoinMarketCap |
1日平均取引量 | 約93億円 | 約28億円 | 主要取引所データ集計 |
流動性 | 高い | 中程度 | 取引所スプレッド分析 |
判定:パックスゴールド(PAXG)の方が高い流動性と取引量を誇る
流動性と取引量の面では、パックスゴールド(PAXG)が明確に優位です。1日の取引量が約93億円とテザーゴールド(XAUT)の約3.3倍に達しており、これにより売買時のスプレッドが狭く、より効率的な取引が可能となっています。
PAXGは金を裏付けとしたデジタル資産の中で、最も人気だと言えますね。
3.安全性・リスク評価
🏛️ テザーゴールド(XAUT)のリスク評価
- ✅ Tetherブランドの実績と知名度
- ✅ スイスでの金保管(政治的安定性)
- ⚠️ 四半期監査頻度がやや低い
🏛️ パックスゴールド(PAXG)のリスク評価
- ✅ 米国規制による高い安全性
- ✅ KPMG監査による信頼性
- ✅ 英国ロンドンでの金保管
判定:両者とも低リスクだが、パックスゴールド(PAXG)がわずかに優位
安全性の面では両者とも高い水準にありますが、パックスゴールド(PAXG)がわずかに優位と考えられます。理由として、米国の厳格な金融規制下での運営と、世界四大会計事務所による毎月の監査が挙げられます。ただし、テザーゴールド(XAUT)も長年の運営実績があり、スイスという政治的に安定した国での金保管など、十分な安全性を確保しています。
4.購入手数料の比較(新規発行)
💰 テザーゴールド(XAUT)の手数料体系
- ✅ 固定手数料:0.25%
- ✅ 初回登録費:150ドル(USDT支払い可能)
- ✅ 保有手数料:無料
- ✅ 小口取引でのコスト優位性
- 出典:TETHER GOLD:FAQ
💰 パックスゴールド(PAXG)の手数料体系
- ⚠️ 変動手数料:0.125%〜1%(取引量に応じて低減)
- ⚠️ 少量取引:約1%
- ✅ 大口取引:0.125%まで低減
- ✅ 保有手数料:無料
- 出典:PAXOS:PAX GOLDの購入売却方法
判定:小口取引ではテザーゴールド(XAUT)が有利、大口取引ではパックスゴールド(PAXG)が有利
手数料面では投資規模によって優位性が変わります。テザーゴールド(XAUT)は0.25%の固定手数料のため、小口投資家にとって予測しやすく使いやすいコスト構造です。一方、パックスゴールド(PAXG)は大口取引では0.125%まで手数料が下がるため、取引額が大きい投資家にはメリットがあります。
ただし、一般の投資家は公式サイトで新規発行を行うより、流通するテザーゴールドをバイナンスやBYBIT等の取引所で買うのが一般的です。
5.現物金交換の条件比較
💰 テザーゴールド(XAUT)の交換条件
- 最低交換単位:430トロイオンス以上
- 交換手数料:別途必要
- スイスでの引き取り
💰 パックスゴールド(PAXG)の交換条件
- 最低交換単位:430トロイオンス以上
- 交換手数料:別途必要
- ロンドンでの引き取り
判定:条件はほぼ同等、引き取り場所の利便性で選択
現物金との交換条件は両者ともほぼ同じです。430トロイオンス(約1,400万円相当)という最低交換単位も同一です。主な違いは引き取り場所で、スイス(XAUT)かロンドン(PAXG)かという点です。日本の投資家にとってはどちらも海外での手続きが必要となるため、金現物との交換はハードルが高いと言えます。
6.主要取引所での現物取引状況
日本の投資家がXAUTやPAXGの現物を購入できる主要な取引所を比較します。
テザーゴールド(XAUT)の取り扱い取引所
- BYBIT(バイビット)
- MEXC(MEXC)
- Bitget(ビットゲット)
パックスゴールド(PAXG)の取り扱い取引所
- Binance(バイナンス)
- MEXC(MEXC)
- Bitget(ビットゲット)
取引所での流動性比較
取引所 | PAXG流動性 | XAUT流動性 | 備考 |
---|---|---|---|
Binance | ★★★★★ | 取り扱いなし | PAXGで世界最大の流動性 |
BYBIT | 取り扱いなし | ★★★☆☆ | 日本で人気の高い取引所 |
Bitget | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | 両通貨とも現物取引可能 |
判定:パックスゴールド(PAXG)の方が取引所での利便性が高い
国内の仮想通貨取引所では、XAUTもPAXGも非対応となっています。そのため、日本居住者が金連動型のステーブルコインを購入する場合は、海外の取引所を利用することになります。また、海外大手のBinanceは日本居住者の口座開設ができないため、BYBITやBitgetが主な選択肢となります。これらの取引所では両方の金連動型ステーブルコインが取り扱われており、実質的な利便性に大きな差はありませんが、全世界的な流動性と取り扱い範囲ではPAXGの方がより多くの選択肢を提供しています。
最終結論:XAUTとPAXGどちらがおすすめ?
総合評価では「パックスゴールド(PAXG)」がおすすめです。
規制面での安全性、流動性の高さ、取引所での利便性を総合的に考慮すると、パックスゴールド(PAXG)の方が多くの投資家にとって適した選択と言えます。
ただし、Tetherブランドへの信頼がある場合や、利用している取引所の対応状況によっては、テザーゴールド(XAUT)も十分に検討価値があります。
投資は自己責任で行い、リスクを理解した上で適切な金額での投資を心がけましょう。
本記事は2025年6月時点の情報に基づいており、投資判断は読者自身の責任で行ってください。仮想通貨投資にはリスクが伴いますので、十分にご理解の上で投資を検討してください。