ビットコインをはじめとする仮想通貨市場は再び強気相場を迎えており、その背景には、アメリカ政府が仮想通貨を新たな戦略資産として位置づける動きがあります。
特にトランプ大統領が、財務省にビットコインを戦略備蓄として保有させる意向を示したことは、市場心理に大きな影響を与えました。
2016年から2020年のトランプ政権は、仮想通貨が金融市場の秩序を乱す可能性があるとして反対していましたが、2024年に入り、脱ドル化が進む中で、アメリカが国際的な通貨競争を制するために仮想通貨を利用する戦略が浮上しています。
本記事では、トランプ2.0政権による金融政策が仮想通貨市場に与える影響を分析するとともに、アメリカ経済とドルが直面する課題について考察。第47代アメリカ大統領として、新たな経済戦略を掲げるトランプ氏の狙いに迫ります。
トランプ2.0とは?仮想通貨市場への新たな視点
「トランプ2.0」とは、ドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任し、第2次政権として展開される政策の総称です。この政権では、「アメリカ第一主義」がさらに強化される見込みであり、対中関税の引き上げや一律関税の導入など、国内産業を保護する経済政策が中心に据えられています。
仮想通貨市場への積極的なアプローチもトランプ2.0の大きな柱の一つです。SEC(米国証券取引委員会)による仮想通貨ETFの承認や、FASB(米国財務会計基準審議会)による仮想通貨会計基準の整備など、アメリカ主導で仮想通貨の規制体制が整備されつつあり、アメリカはこの市場での主導的地位を確立しようする動きがあります。
トランプ1.0と2.0の金融政策の転換点
第一次トランプ政権では、欧州債務危機や中国株の暴落といった外的要因がアメリカに有利に働き、国内の税制改革と国外からの資金吸引が政策の焦点でした。
この時アメリカは「高みの見物」を決め込む余裕がありましたが、2025年のトランプ2.0政権が直面する課題は複雑です。
現在、世界中で進む「脱ドル化」の動きにより、ドルの支配的地位が揺らいでいます。加えて、前政権で膨張した財政赤字と高金利環境が、追加の借金や通貨発行を難しくしています。もしドルの価値が国際的に認められなくなれば、アメリカはインフレを国内に抱え込むリスクを負うことになるでしょう。
このような背景の中、トランプ2.0政権は、ドルの国際的地位を失うことへの備えとして仮想通貨戦略に注目しています。特にビットコインは、国際的に最も広く承認される可能性を持つ通貨として位置づけられ、未来の金融システムを制する鍵とされています。この様な仮想通貨へのアプローチは、トランプ1.0政権時代とは異なる金融政策の方向性を示しています。
ドルの未来:世界中で進む「脱ドル化」とアメリカの仮想通貨戦略
第二次世界大戦後、アメリカは圧倒的な経済力を背景にドルを世界中に送り出しました。その後、冷戦終結に伴い最大の対抗国であったソ連が崩壊し、ドルの影響力はさらに拡大。2000年には、世界各国の外貨準備の約70%がドルで構成されるまでに至りました。
2020年代に入り、アメリカ政府の量的緩和(QE)政策や急激な利上げが相次ぎ、ドルの信頼性が揺らぎ始めました。ゼロ金利政策と無制限のQEが実施された直後、金利が急上昇したことで米国債の価格が大幅に下落。これにより、多くの国がドル建て資産を売却し、代わりに金や仮想通貨への投資を強化する動きを見せています。
特に中国では、かつて約1.3兆ドルの米国債を保有していましたが、現在ではその額を7600億ドルにまで減らしており、またBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)としても、ドルへの依存を減らすために人民元やルーブルで決済できる独自の決済システムを構築するなど、明確に脱ドル化が進んでいるのが現在の世界の情勢です。
トランプ政権:脱ドル化に対するアメリカの仮想通貨戦略
脱ドル化がすすむ一方で、アメリカは仮想通貨を戦略資産として取り込み、新たな金融基盤を築こうとしています。
トランプ2.0政権が仮想通貨をドルの代替品として掌握すれば、世界経済への影響は計り知れません。かつてドルが「世界通貨」として台頭した際、貸借市場がその地位確立を後押ししたように、仮想通貨市場も同様の成長を遂げる可能性があります。
アメリカは仮想通貨市場を管理するため、公平に見える規制を導入しつつ、実際には自国に有利な政策を展開するでしょう。政府主導の大量購入ではなく、税制優遇や法改正を通じて、民間部門による需要増加を狙う戦略が採られると予測されます。こうした規制戦略は、ビットコイン市場に信頼性をもたらしながら、成長を加速させています。
ビットコイン:規制と成長の鍵
ビットコインは誕生からわずか16年で、多くの国の法定通貨が達成できなかった地位に達しました。しかし、「非中央集権性」を規制と引き換えにするべきか、またAIや量子計算の進化にどう対応するかといった課題を抱えています。
現在、主要な仮想通貨市場はアメリカの規制に従うことで、SECによるETF上場承認やFASBによる会計基準の制定を可能にしました。これにより、ビットコインの流動性が向上し、企業による大量保有も進んでいます。その結果、ビットコイン価格は10万ドルに達しましたが、さらなる成長には政府の明確な姿勢が必要です。
共和党が議会で絶対多数を占めている現在、提案されたビットコイン購入計画は順調に進むと予想されます。公開された資料によれば、この計画ではアメリカ財務省が今後5年間でビットコインを購入や押収を通じて100万BTCまで保有を増やすことを目指しています。そのため、少なくとも追加で79万BTCを取得する見込みです。これほどの規模で市場に影響を与える購入計画は、ビットコイン価格をさらに押し上げる原動力になるでしょう。
仮想通貨市場の期待と課題
仮想通貨市場全体は成長基調を維持していますが、機関投資家の参入により価格変動リスクも高まっています。特に、大規模な保有者が資産を売却する際の影響は無視できません。
一方で、DeSci(分散型科学)やRWA(実世界資産)の普及、関連アプリケーションの進化が市場の成長を後押しする重要な要素となっています。これらの技術革新や採用状況が、今後の仮想通貨市場の方向性を大きく左右するでしょう。
新しい金融時代の到来に向けた仮想通貨市場の動向に注目が集まっています。