昨年の仮想通貨市場は、超強気相場で急成長を遂げましたが、イーサリアム(ETH)を単体で見ると、ビットコイン(BTC)やソラナ(SOL)に比べて価格上昇は抑えられています。
「イーサリアムは今後も成長を続けるのか、それとも停滞してしまうのか?」
本記事では、イーサリアム(ETH)が伸び悩む理由や供給とバーンの仕組みを解説し、今後の投資家の動向と市場の実需を分析。2025年のETH投資のポイントと価格を分析します。
- なぜETHの価格上昇がBTCやSOLより鈍かったのか?
- ETHの供給メカニズムとバーン(消滅)が価格にどう影響するのか?
- 2025年のETH投資のポイントと価格分析
イーサリアムがビットコインやソラナに比べて伸び悩んでいる理由
上のチャートは2024年初より、現在の2025年3月1日の価格の出来高を比較したチャートになりますが、ビットコイン(BTC)は91%、ソラナ(SOL)は25%と大幅に上昇しているのに対し、ETHは-2%と唯一マイナスの出来高とゆうことが分かります。
まずは、なぜイーサリアムが伸び悩んでいるのかを解説します。
イーサリアム VS ビットコイン ETH劣勢の理由
2024年の仮想通貨市場の最大の価格上昇要因は、ビットコインのETFが承認された事による機関投資家による資金流入でした。
信頼性の高い資産を重視する投資家は、新たな市場に参入する際も安全性が確保された銘柄を選ぶ傾向があります。ビットコインは供給量が2100万枚に固定され、ゴールドのような「安全資産」としての地位を確立し始めており、ETF発行企業や個人投資家の買いが集中しています。
これに対しイーサリアムは技術プラットフォームとしての側面が強く、その複雑性から一般投資家には理解しづらい面があります。
さらに、ビットコインの半減期は市場に明確な需給バランスの変化をもたらし、価格上昇の触媒となりました。イーサリアムにはこうした周期的なイベントがないため、同様の価格上昇トリガーに欠けていた所もあります。
イーサリアム VS ソラナ ETH劣勢の理由
2024年のソラナの急成長の背景には、イーサリアムのスケーラビリティ問題を克服する技術的な優位性があります。特に、トランザクション処理速度の向上と手数料の低コスト化により、多くの開発者やプロジェクトがソラナに流入しました。
特にDeFi(分散型金融)やNFT市場において、ソラナはイーサリアムからユーザーを奪うことに成功しています。イーサリアムはガス料金(取引手数料)の高さが依然として課題となっており、小規模取引ユーザーが離れている現状です。
さらに、ソラナはモバイルフレンドリーな戦略を積極的に展開し、Solana Mobileの普及により新たなユーザー層を開拓しました。イーサリアムはL2(レイヤー2)ソリューションで対応を進めていますが、ユーザー体験の簡素化においてはソラナに一歩遅れをとっています。
イーサリアムも「ダンクシャーディング(Danksharding)」などの技術革新を進めている為、今後、両者の競争がどのように展開されるのかが市場の注目点となるでしょう。
イーサリアム財団の影響
イーサリアム財団が保有するETH資産の売却も市場に一定の下落圧力をもたらしています。
財団はエコシステム開発支援のために定期的にETHを売却しており、これが供給過多の状況を生み出している側面があります。2025年1月だけでも約300ETH(約98万ドル相当)が売却されました。
これにより、市場では、財団が多額のETHを売却することに対して、「イーサリアムの将来性に自信がないのではないか?」 という疑念が生まれ、投資家の不安を煽る結果となっています。特に、財団はイーサリアムのエコシステムにおける象徴的な存在であるため、その行動は市場全体に大きな影響を及ぼすでしょう。
また、イーサリアムの継続的な技術アップデートは長期的には良いものの、短期的には投資家に不確実性をもたらし、「様子見」の姿勢を促している可能性があります。
イーサリアムの供給量とバーン(消滅)が市場価格に与える影響
イーサリアムの供給量は、ビットコインのように上限が固定されておらず、市場の需給バランスによって変動します。
EIP-1559の導入により、取引手数料の一部がバーン(消滅)される仕組みが確立されるようになり、供給量が調整可能となりました。 流通量がコントロールされる事で価格にも影響を与えます。
EIP-1559(Ethereum Improvement Proposal 1559)は、イーサリアムの取引手数料(ガス代)の一部をバーンする仕組みを導入したアップグレードです。
ETHの供給量とバーン(消滅)のメカニズム
ETHは年間最大1,800万ETHが発行されますが、取引手数料の一部がバーンされるため(消滅する)ため供給量が調整されます。ETHは無制限に増え続けるのではなく、ネットワークの利用状況によって供給が変動します。
- 供給増加要因:バリデーターへの報酬として、年間約60万ETHが新規発行されています。
- 供給減少要因:ネットワーク上の全取引の「基本手数料」部分が自動的にバーンされます。2025年現在、年間約120-180万ETHがこの仕組みで市場から消滅しています。
- 純供給変化:バーン量が新規発行量を上回れば、イーサリアムは「純デフレ」状態になるため価格上昇の要因となります。
バリデーターとはイーサリアムのPoSネットワークを支える参加者です。32ETHをステーキング(預け入れ)して取引の検証やブロック提案を行い、報酬を得ます。現在約100万人以上が活動中で、少額保有者はステーキングプールを通じて参加できます。
2025年現在、イーサリアムのネットワーク利用率によって、約120-180万ETHが年間でバーンされていますが、同時に約60万ETHが新規に発行されています。この差分がネット供給減少(デフレ)となりますが、予想されていたほどの大規模なデフレには至っていません。
- ネットワークの利用が増加
→ 取引手数料の支払いが増え、バーン量が増加
→ 供給減少
→ 価格上昇の要因 - ネットワークの利用が減少
→ 取引手数料の減少により、バーンされるETHの量が減少
→ 新規発行が供給を上回る
→ 価格下落のリスク
ETHの価格はネットワークの利用状況に強く左右されるため、投資判断にはETHの発行量とバーン量のバランスを理解することが重要です。
市場の供給状況をリアルタイムで確認するには、Etherscanなどのブロックチェーンエクスプローラーを活用するのが有効です。
2025年のイーサリアムを分析!投資家の動向と市場の実需
イーサリアムは、単なる投機対象ではなく、実際に活用される資産としても注目されています。そのため、今後のイーサリアムの価格を予想するには、「機関投資家の動向」だけでなく「市場での実需」にも注目しましょう。
機関投資家の動向
企業によるETH保有の拡大
最近、米国の上場企業IntchainsがETHの保有を計画し、機関投資家の関心が拡大しています。同社は2024年9月30日~11月28日に約915.3ETH(約290万ドル相当)を追加購入し、総保有量は約5,066.6ETH に達しました。これは、企業によるETHの長期保有戦略が進んでいる証拠と言えるでしょう。
さらに、World Liberty Financial(WLF)は、2025年1月21日時点で約56,969ETH(約1億1,280万ドル相当)を保有しており、これは同社の総資産の約57%を占めています。こうした企業による大規模な保有は、ETHへの信頼と長期的な価値への期待を示しています。
規制環境の変化と資金流入の可能性
アメリカの仮想通貨規制が緩和傾向にあり、新たな資金流入の期待が高まっています。特に2024年のビットコインETFの成功を受け、ETHのETF承認への期待が高まっています。
ETF承認が実現すれば、これまで仮想通貨市場への参入を躊躇していた機関投資家や年金基金などからの大規模な資金流入が期待できます。ブラックロックやフィデリティなどの大手資産運用会社がすでにETH関連商品の開発を進めていることも、こうした潮流を示しています。
機関投資家参入の市場への影響
機関投資家のETH市場への参入拡大は、以下のような影響をもたらす可能性があります:
- 市場の流動性向上と価格変動の安定化
- 長期的な需要の創出と価格下支え効果
- 市場の成熟度向上による一般投資家の信頼獲得
特に機関投資家の多くは短期的な投機ではなく、長期的な価値保有を目的としているため、急激な価格変動を抑制する効果も期待できます。今後もこうした機関投資家の動向は、ETH価格の重要な指標となるでしょう。
イーサリアムの実需の動向
ETHの価値は、単なる投機対象としての側面だけでなく、スマートコントラクトやDeFi(分散型金融)、NFT、AI、トークン化資産(RWA)、金融取引などの幅広い用途によって決まります。
特に、以下の3つの成長要因が価格に直接影響を与えると考えられます。
1.スマートコントラクトの普及と実需の拡大
- 企業や金融機関がブロックチェーンを活用する動きが加速しており、ETHを基盤とするスマートコントラクトの利用も拡大中。
- JPMorganのOnyx、VisaのUSDC決済、BlackRockのトークン化資産(RWA)など、大手企業がETHを活用する動きが加速しています。
- 実際にDeFi市場では、イーサリアム上のステーブルコインやDEX(分散型取引所)の取引高が増加し、ネットワーク手数料の増加=ETHのバーン(供給削減)につながっています。
2.EIP-4844によるガス代削減
- EIP-4844の導入により、Layer2(Arbitrum、Optimismなど)の取引コストが大幅に削減されました。
- これにより、イーサリアムネットワークの利用がさらに活発になり、結果的にEIP-1559のバーンメカニズムもより効果を発揮しやすくなっています。
3.機関投資家の資金流入
- 2024年のビットコインETFの成功を受け、イーサリアムのスポットETFも承認される可能性が高まっています。
- SECがETHの証券性を否定すれば、機関投資家がETHを直接保有しやすくなり、新たな資金流入が価格を押し上げる可能性があります。
- すでにブラックロックやグレースケールはETH関連商品の開発を進めており、機関投資家のETHポジションが増加する兆候も見られます。
短期的には需給やマクロ経済の影響で価格が変動しますが、長期的にはスマートコントラクトの普及やEIP-1559のバーン、EIP-4844のスケーラビリティ向上、機関投資家の参入がETHの価値を支える可能性が高いです。特に、EIP-1559とEIP-4844が連携することで供給減少が加速し、価格上昇の要因となるでしょう。
今後の技術進化や市場の変化を注視しながら、ETHの価値をどう評価するかがカギとなるでしょう。
2025年のイーサリアム価格予想
2025年のイーサリアム価格を予測する上で、これまで解説してきた要素を総合的に考慮する必要があります。複数の要因を踏まえた分析結果は以下のとおりです。
強気シナリオ (楽観的見通し)
- 価格帯: 4,000ドル〜
- 主な推進力:
- ETHスポットETFの承認と機関投資家からの大規模資金流入
- EIP-1559とEIP-4844の相乗効果による供給減少の加速
- DeFi、NFT、RWA(実世界資産のトークン化)市場の急成長
- 企業によるイーサリアムの採用拡大
中立シナリオ (基本見通し)
- 価格帯: 2,500ドル〜4,000ドル
- 主な推進力:
- ETHスポットETFの限定的な成功
- 緩やかなDeFiとNFT市場の成長
- L2エコシステムの拡大による間接的なETH需要増加
- バーン率と新規発行のバランスが現状維持
弱気シナリオ (慎重見通し)
- 価格帯: 1,000ドル〜2,500ドル
- 主な推進力:
- 規制環境の不確実性による機関投資家の様子見姿勢
- 競合チェーン(ソラナなど)への資金流出継続
- マクロ経済の悪化による仮想通貨全体の調整
- L2への移行加速によるメインチェーンのガス料金減少とバーン量の低下
2025年のイーサリアムへ投資する方は、短期的な価格変動よりもイーサリアムの技術的進化と実用性の拡大という長期的な成長ストーリーに注目すると良いでしょう。
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